群馬県沼田市のスーパーにクマが侵入したというニュースが話題になっています。
「まさかスーパーに!?」という衝撃とともに、
「なぜ人里にまでクマが出てきたのか」と不安を感じた人も多いはず。
ここでは事件の詳細とともに、近年クマの出没が増えている背景、
そして都市生活圏にまで迫る“野生との境界線”について考えていきます。
群馬で起きたクマのスーパー侵入事件とは
2025年10月7日夜、群馬県沼田市恩田町にある「フレッセイ沼田恩田店」で、
体長約1.4メートルの成獣のクマが店内に侵入しました。
出典元:https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/fnn/nation/fnn-942486
買い物客の男性2人が襲われ、両腕をひっかかれるなどのケガを負いましたが、命に別条はありません。
「鉢合わせして、この辺をつかまれました。払いのけたら店内の方に逃げていきました」
― 被害に遭った男性の証言
引用元:FNNプライムオンラインより
クマはその後、店の外に出て南方向に逃走。
現場はJR沼田駅から北に約2キロ、国道17号沿いにある商業エリアで、
すぐ隣には大型ホームセンター「セキチュウ」もあります。
川や林が近いとはいえ、交通量の多い場所にまで現れたことは驚きです。
なぜクマがスーパーに現れたのか?
クマが住宅街や商業施設に出てくる背景には、今回の出没には、複数の要因が複雑に絡み合っていると考えらる。
出典元:pic.x.com/CHstKPpM15
• 交通量の多い幹線道路沿いとはいえ、すぐそばには川と林が広がっており、人間の生活圏と野生動物の生息域が隣り合わせになっている。
• 人間の生活ゴミが誘因に?
クマは嗅覚が非常に鋭く、遠くからでも食べ物の匂いを察知する。誰かが捨てた生ゴミや食品残渣が、クマを市街地へと誘導した可能性がある。
• 餌不足が深刻化
今年はブナやドングリなど、クマの主食となる木の実が全国的に不作と報告されている。山で十分な栄養が得られないため、クマは人里にまで餌を求めて移動してきている。
• 気候変動による行動パターンの変化
秋になっても気温が高く、冬眠の準備が遅れがちになっている。活動時期が長引くことで、クマが人間の生活圏に現れるリスクも高まっている。
• 過疎化による人の気配の希薄化
山間部の人口減少により、人の出入りが少なくなったことで、クマが人の存在を警戒せずに近づきやすくなっている。かつては人の気配が“境界”となっていたが、その緩衝地帯が失われつつある。
こうした自然環境の変化と社会構造の変化が重なり、クマがスーパーという人間の生活の中心にまで現れる事態が起きた。今後は、野生動物との共存を見据えた地域づくりと、ゴミ管理や情報共有などの対策が求められる。
都市生活圏でクマの出没が増えている件数
近年では「クマは山にだけいる動物」という常識が崩れつつあります。
環境省によると、2024年のクマの出没件数は全国で約1万件を超え、
観測史上最多を記録しました。
• 出没件数の急増
環境省の統計によると、令和5年度(2025年4月〜12月)のツキノワグマ出没件数は23,669件で、平成21年度以降の同時期で過去最多を記録しています。
• 人身被害も増加傾向
2024年4月から2025年1月末までに報告されたクマによる人身被害は197件(218人)、うち死亡6人。月別統計がある平成18年度以降で最も多いペースです。
• 地域別の特徴
• 東北地方:出没件数の約6割(13,183件)を占め、特に岩手県(5,818件)、秋田県(3,663件)が突出しています。
• 関東地方:群馬県や栃木県などで目撃が増加。東京都西部(多摩地域)にもツキノワグマが生息しており、都市部での目撃も報告されています。
• 中部地方:長野県では里山や住宅地への出没が増え、高齢者の農作業中の事故も発生しています。
そのうち半数以上が、住宅地・市街地近くでの目撃例です。
つまり、クマはもう「山の向こうの話」ではありません。
筆者の地域での実感
私の住んでいる地域でも、ここ数年でクマの存在をとても身近に感じるようになりました。
今では小学生が登下校の際にクマよけの鈴をつけるのが当たり前で、
森の中の通学路にはクマよけの鐘まで設置されています。
私が子どものころはそんな習慣はなく、「クマが出た」なんて聞いたこともありませんでした。
ところが最近では、
「ごみステーションにクマが現れた」
「小学校近くでクマが出たので保護者はお迎えをお願いします」
というメールが届くこともあります。
今回クマが侵入した群馬・沼田市のスーパー(フレッセイ沼田恩田店)は、
隣に大きなホームセンター(セキチュウ)があり、私も月に一度ほど訪れる場所です。
近くには川が流れていますが、交通量の多い国道もすぐそばにあり、
「こんなところまでクマが来るなんて」と正直驚きを隠せませんでした。
近年では、毎年わが家の庭にもニホンカモシカが訪れるようになりました。
山の動物たちが少しずつ、人間の生活圏に近づいている——そんな実感があります。
家に来たカモシカ
最初に出会ったのは、ある静かな午後のこと。家の中にいると、ふと外から視線を感じました。窓の外を見ると、なんとカモシカがこちらをじっと見ていたのです。
私が驚いて動いた瞬間、カモシカもびっくりしたようで、慌てて逃げていきました。
外に出てみると、まだ庭の隅にいて、そっと近づいたらまた驚いて転びながら逃げていきました。
その後、家に戻ってしばらくすると、また視線を感じて窓の外を見ると、再びカモシカが戻ってきていました。その時、撮影した動画です。
撮影後もその日にまた来ました。
それからというもの、毎年一度は庭に姿を見せるようになり、少しずつ大きく成長しているようです。
野生動物との距離が縮まっていることを、身近な出来事として感じるようになりました。
クマが住宅街に現れたときの正しい通報方法
もしあなたの身近にクマが現れたら、絶対に近づかないでください。
「撮影しよう」「追い払おう」と思って行動するのは非常に危険です。
遭遇したときのNG行動
-
大声で叫ぶ
-
背を向けて走る
-
石を投げる・挑発する
走って逃げると、クマの「追跡本能」が刺激されてしまいます。
最悪の結果を招くため、絶対に避けましょう。
正しい対応
-
クマの動きを見ながらゆっくり後退
-
背を見せず静かに距離を取る
-
退避後に110番または自治体に通報、できるだけ「発見場所・時間・クマの大きさ・方向」を伝える
多くの場合、クマは人間に興味を失うとその場を立ち去ります。
「慌てない・逃げない・騒がない」ことが鉄則です。
自治体によっては「クマ出没情報マップ」を公開している地域もあります。
自分の住むエリアの公式サイトを確認しておくと安心です。
「死んだふり」は通用する?実際の専門家の見解
昔から「クマに遭遇したら死んだふりを」と言われますが、
実際には効果がないどころか、逆効果になる場合もあります。
ツキノワグマの専門家・米田一彦氏によると、
「死んだふりはクマが興奮している場合、かえって攻撃を誘発する可能性がある」とのこと。
むしろ大切なのは、
-
背を向けずにゆっくり後ずさる
-
大声を出さず落ち着いた行動を取る
-
クマとの距離を保ち、安全な場所に退避する
という冷静な対応です。
パニックにならないためにも、日ごろから行動をイメージしておくことが重要です。
クマ除けグッズや音の効果はあるのか?
よく登山やハイキングで使われる「クマ鈴」や「ラジオ音」。
これらはある程度の効果があるとされています。
出典元:https://store.shopping.yahoo.co.jp/lifepowershop/lp04304.html
音が聞こえることで、クマが「人間がいる」と察知して避けてくれることが多いからです。
ただし、クマも学習能力が高いため、
「音=食べ物をくれる人間」と誤認するケースも報告されています。
つまり、過信は禁物。
鈴やスプレーはあくまで補助的手段と考え、
ごみの放置や食べ残しを減らすなど「環境側の対策」も重要です。
クマと戦うなんて、やっぱり無理でした
昔、空手の先生から聞いた話です。若い頃、自分を極限まで鍛えたその先生は、「クマと戦えるかどうか、試してみたい」と本気で思ったそうです。
サバイバルナイフを持って山に入り、クマを探して歩き回った末、ついに対峙する瞬間が訪れました。
……が、いざ目の前にクマが現れると、やっぱり「普通に怖かった」そうです。
にらみ合った末、クマの方が先に逃げていったそうですが、先生はその経験をきっかけに「もうやめよう」と思ったとのこと。命あっての武道です。
毎日、刀を振ってる私も「もしクマに遭遇したらどう戦うか?」と考えてしまいます。
とはいえ、刀でもなければ勝負にならなそうですし、そもそも刀を持っていたら銃刀法違反で捕まってしまいます。
現実的には、まだまだ実力も足りませんし、いざという時に慌てず動けるよう、心の鍛錬も欠かせない気がします。
まとめ
北海道・知床で起きたヒグマによる痛ましい事故をはじめ、近年では本州でも東北地方を中心に、ツキノワグマによる人身被害が相次いでいます。
そして今、群馬など関東地方にもその影響が及び、“熊害の南下”という言葉が現実味を帯びてきました。
背景には、山中での餌不足や個体数の増加といった要因があると考えられています。
クマに限らず、イノシシ・シカ・キョン・アライグマなど、農作物や家屋に被害をもたらす野生動物の数は全国的に増加傾向にあります。
こうした状況の中で、これまでの「鳥獣保護」一辺倒の考え方だけでは立ち行かなくなってきています。
今後は、「人間の暮らしと安全をどう守るか」という視点を持った政策への転換が求められているのではないでしょうか。
環境省や自治体には、現場で暮らす人々の声に耳を傾けながら、地域の実情に即した、実効性のある対策が期待されます。
“野生動物との共存”という理想を掲げつつも、必要に応じて“距離の取り方”を現実的に考える——そんな柔軟な姿勢が、今まさに問われているのかもしれません。